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RAS/MAPKシグナル伝達経路とは

RAS pathway

RASは21kDaの分子量で単量体GTPaseとして大きなファミリーに属する。RASサブファミリーはsmall G 蛋白のスーパーファミリーを構成し、その中には古典的なHRAS、KRAS、NRASの3つのRASの他にR-RAS、TC21(R-RAS2)、M-RAS (R-RAS3)、Rap1A、Rap1B、Rap2A、Rap2B、RalA、RalBから成る。HRAS、 KRASはラット肉腫ウイルスから分離され、NRASはヒト神経芽細胞腫から分離された。RASは細胞外のさまざまな刺激、例えばチロシンキナーゼレセプター、3量体G蛋白、サイトカインレセプター、カルシウムチャネルなどの刺激を受けてGDPへ結合した不活性の状態からGTPに結合した活性化の状態に移行する。このGDP/GTP交換反応を促進するのがGEF(s)(guanine-nucleotide exchange factors)である。またGTPに結合したRASは内在性のGTPaseにより、GDP結合型に戻るが、この反応を促進するのがGTPase-activating proteins(GAPs)である。活性化したGTP結合型のRASは幅広い下流のターゲット(effectors)と相互作用をし、下流のシグナルを活性化する。現在そのeffectorとしてRAFキナーゼ、PI-3 キナーゼ、RalGDS、p120GAP、MEKK1、Rin1、AF-6、phospholipase C epsilon、Nore/MST1などが知られている(上図)。

MAPキナーゼは酵母からヒトまで高度の保存されたセリン/スレオニンキナーゼであり哺乳類では現在ERK(extracellular signal-regulated kinase、 古典的MAPK)、JNK、p38、ERK5の4種類が知られている。RAS/RAF/MEK/ERKは古典的なRAS/MAPKカスケードであり、おもに増殖因子による刺激を核に伝え、細胞の増殖・分化・細胞死に関わる。活性化したRASがRAFを活性化し、RAFが下流のMEK1/2の2つのセリン残基をリン酸化し、MEK1/2がERK1/2のスレオニン残基・チロシン残基をリン酸化することによりシグナルが伝達される。活性化したERK1/2は核の中に移行してELK-1、Sap-1などの転写因子を活性化するとともに、細胞質でRSK(ribosomal S6 kinase)やMNK(MAP kinase interacting kinase)をリン酸化する